保育士の仕事において、多くの人が悩まされているのが「持ち帰り仕事」です。日中は子どもたちの安全確保や保育活動に追われ、指導計画の作成や行事の準備、壁面製作などの事務・製作作業が勤務時間内に終わらず、自宅に持ち帰って夜遅くまで作業をしている保育士は少なくありません。
本記事では、保育士の持ち帰り仕事の実態や原因を探るとともに、持ち帰り仕事をなくすための具体的な解決策や、残業の少ない職場の選び方を解説します。この記事を読めば、プライベートの時間を確保し、心身ともに余裕を持って保育の仕事に向き合うヒントが見つかるはずです。
保育士の持ち帰り仕事の実態と主な内容
保育士の持ち帰り仕事は、個人の能力不足が原因ではなく、業界全体の構造的な問題として広く存在しています。まずは、多くの保育士がどのような仕事を持ち帰っているのか、その実態を確認しましょう。
持ち帰り仕事の主な種類
保育士が自宅に持ち帰って行う仕事は、大きく分けて「事務作業」と「製作作業」の2つに分類されます。
- 事務作業: 年間・月間・週間の指導計画(指導案)の作成、クラスだよりの原稿作成、行事の企画書作成など。これらは思考力を要するため、静かな環境で集中して行いたいという理由から持ち帰るケースも多いです。
- 製作作業: 季節ごとの壁面装飾の作成、運動会やお遊戯会などの行事で使用する衣装や小道具の準備、手作りおもちゃの製作など。手作業で時間がかかるため、自宅での作業を余儀なくされることが少なくありません。
なお、園児の個人情報が含まれる「連絡帳」や「児童表」などの持ち出しは、個人情報保護の観点から厳しく禁止されている園がほとんどです。
【ブレイブ登録者の声】
「以前勤めていた園では、毎月の壁面製作と行事の準備で、休日のほとんどが潰れていました。手作りの温かみは大切ですが、自分の子どもと遊ぶ時間さえ削らなければならない状況に限界を感じ、転職を決意しました。」(30代女性・M.K.さん)
持ち帰り仕事は「残業」になるのか?
持ち帰り仕事が労働時間として認められ、残業代が支払われるかどうかは、その作業が「園長や主任からの明確な指示(または黙示の指示)」によるものか、「保育士の自主的な判断」によるものかで分かれます。
「明日までにこの書類を完成させてきて」と明確に指示された場合や、明らかに勤務時間内では終わらない量の業務を割り当てられ、期限が迫っている場合(黙示の指示)は、労働時間とみなされる可能性が高いです。しかし現実には、「自分の裁量で持ち帰った」と判断され、サービス残業(無給)となってしまうケースが後を絶ちません。

なぜ保育士の持ち帰り仕事はなくならないのか?
持ち帰り仕事が常態化してしまう背景には、保育現場特有のいくつかの原因が絡み合っています。
1. 慢性的な人手不足と配置基準の問題
最大の原因は、保育士の配置基準ギリギリで運営している園が多く、常に人手が不足していることです。日中は子どもから目を離すことができず、事務作業や製作を行うための「ノンコンタクトタイム(子どもと離れて作業に集中できる時間)」を確保することが非常に困難です。
2. 業務のデジタル化(ICT化)の遅れ
多くの業界でデジタル化が進む中、保育業界では依然として「手書きの書類」や「手作りの製作物」が重んじられる傾向があります。指導案や日誌をすべて手書きで作成したり、行事のたびに新しい衣装を一から手作りしたりと、非効率な作業フローが改善されていない園も少なくありません。
3. 「持ち帰るのが当たり前」という職場の雰囲気
先輩保育士や主任が日常的に仕事を持ち帰っていると、若手保育士も「自分だけ定時で帰ってはいけない」「持ち帰ってでも終わらせるのが責任だ」と感じてしまいます。このような古い慣習や職場の同調圧力が、持ち帰り仕事を減らす大きな障壁となっています。

今日からできる!保育士の持ち帰り仕事を減らす5つの解決策
持ち帰り仕事をゼロにするのは簡単ではありませんが、個人の工夫や園全体での取り組みによって、負担を大幅に軽減することは可能です。
1. スキマ時間を徹底的に活用する
子どもの午睡(お昼寝)中や、自由遊びの時間など、わずかなスキマ時間を見つけて事務作業を進めましょう。5分、10分の短い時間でも、連絡帳の下書きや指導案の構想メモなど、できることはたくさんあります。
2. テンプレート化と過去のデータの再利用
指導案やクラスだよりのフォーマットをテンプレート化し、毎月ゼロから考える手間を省きましょう。また、季節の挨拶文やよく使うイラスト素材などはストックしておき、過去のデータを再利用することで作業時間を大幅に短縮できます。
3. 製作物は「長く使える工夫」と「手抜き」を意識する
壁面装飾は、ラミネート加工を施して数年間繰り返し使えるようにする、季節を問わず使えるベース部分を作っておき、装飾の一部だけを変更するといった工夫が有効です。また、「すべて手作り」という完璧主義を捨て、市販のキットや100円ショップの素材を上手に活用する「良い意味での手抜き」も必要です。
4. 得意分野で業務を分担する
ピアノが得意な人、製作が得意な人、パソコンでの書類作成が得意な人など、保育士にはそれぞれ得意分野があります。一人で全ての業務を抱え込まず、職員同士で得意な作業を分担し合うことで、園全体の業務効率が劇的に向上します。
5. 園長や主任に業務改善を提案する
個人の努力だけでは限界がある場合、園の管理職に現状を相談し、ICTシステムの導入や保育補助スタッフの増員などを提案してみましょう。具体的な作業時間や負担の大きさを数値化して伝えると、説得力が増します。

持ち帰り仕事がどうしても減らない場合は「転職」も視野に
自分なりに工夫を重ね、園に改善を提案しても状況が変わらない場合は、その園の運営方針自体に問題がある可能性が高いです。心身の健康を損なう前に、持ち帰り仕事や残業の少ない職場への転職を検討することをおすすめします。
残業や持ち帰り仕事が少ない職場の特徴
転職先を探す際は、以下の特徴を持つ園に注目してみましょう。
| 職場の特徴 | 持ち帰り仕事が少ない理由 |
|---|---|
| ICTシステムを導入している園 | 登降園管理や指導案作成、保護者連絡などがアプリやシステムで完結し、手書きの事務作業が大幅に削減されているため。 |
| 行事が少ない園(小規模保育園など) | 運動会やお遊戯会などの大規模な行事が少ない、または行事自体を簡素化しているため、製作物や準備の負担が少ない。 |
| 保育補助スタッフが充実している園 | 掃除や準備、製作物の補助などを担当するスタッフが配置されており、保育士が保育や重要な事務作業に専念できる環境が整っている。 |
| 派遣保育士として働く | 派遣保育士は基本的に契約外の業務や時間外労働が禁止されているため、持ち帰り仕事やサービス残業が発生しない。 |
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よくある質問
持ち帰り仕事中のケガは労災になりますか?
原則として、自主的に持ち帰った仕事中のケガは労災とは認められません。ただし、園長などから明確な指示があり、業務として認められる状況下でのケガであれば、労災が適用される可能性があります。判断が難しいケースが多いため、まずは労働基準監督署に相談することをおすすめします。
持ち帰り仕事を拒否することはできますか?
園からの指示であっても、労働時間外の業務(持ち帰り仕事)を強制することは労働基準法違反にあたるため、法的には拒否することが可能です。しかし、現実には職場の人間関係や評価を気にして断れないケースが多いのが実情です。
派遣保育士でも持ち帰り仕事はありますか?
派遣保育士は、派遣会社と結んだ雇用契約の範囲内で業務を行います。契約外の業務や時間外労働は原則禁止されているため、持ち帰り仕事やサービス残業は発生しません。プライベートを重視したい方に適した働き方です。
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執筆・監修
ブレイブ コラム編集室
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