どう対応すべき? 介護施設の現場での利用者家族の対応
介護施設では、利用者さんだけでなく、そのご家族に対応しなければならないケースも多くあります。そんな現場からよく聞こえてくるのが「利用者さんとのコミュニケーションには慣れてきたけれど、ご家族と接するときはちょっと緊張するし、苦手意識がある」という声です。とはいえ、介護職として働く以上、利用者家族の対応は必要不可欠。どうしたら、よりよい対応ができるのか、一緒に考えていきましょう。
介護施設において利用者家族とのコミュニケーションが大切な理由
介護施設で働く際、おもに接するのは利用者さんです。だから、利用者さんとよい関係を築こうと努力することは当然といえば当然なのですが、それと同じくらい利用者家族とのコミュニケーションも大切にしなければなりません。その理由は、大きくふたつあります。
ひとつは、お互いの信頼関係を築くためです。
利用する側が身内を預ける場合、どうしても不安はつきもの。施設側としっかりとコミュニケーションをとり、介護方針、現場の雰囲気などを理解してもらえれば、安心感につながります。
逆に、利用者さんがらみで困ったことが起きたときも、ご家族に相談できれば、介護する側としても安心です。双方の風通しをよくしておくことは、利用者さんのためにも大切なことだといえます。
もうひとつの理由は、利用者さんに関する情報を得て、介護サービスやケアプランに生かせることです。
高齢の利用者さんの場合、自分の気持ちや状況を正確に伝えられないことがあります。好きな食べ物、体調、家での様子など、ご家族だからこそ把握している情報を提供してもらえることは介護の助けになりますし、トラブルの回避にもつながることです。
例えば「ゆうべは、よく眠れなかったようだ」とご家族に教えてもらえれば、いつもより慎重な体調観察を心がけられますし、お昼寝に誘導するといった対応もできます。
突き詰めれば、介護する側もお願いする側も安心でき、利用者さんに対して適切なサービスが提供できる――利用者家族対応は、よりよい介護をするために必要であり、重要なことでもあるのです。
利用者家族とのコミュニケーションの取り方・接し方
利用者家族とのコミュニケーションが大切だということはわかりました。では、具体的に、どのように接すればよいのでしょうか。項目に分けて解説します。
利用者家族へ報告する際
利用者のご家族は「施設でどんなふうに過ごしているのか」「身内が何か迷惑をかけていないか」といったことに不安を感じがちです。ですから、まずは笑顔で接することを心がけ、不安感をやわらげてあげましょう。
時には、少々重たい話をしなければならないこともあるかもしれません。そんなときも、笑顔で、利用者家族にリラックスして話を聞いてもらえるような雰囲気を作っていきましょう。
実際に話をするときは、介護や医療の専門用語は避け、相手にわかりやすい言葉を使うようにします。例えば「アセスメント」「カンファレンス」といった言葉は、介護現場では通じる言葉ですが、一般の人にはあまりなじみがありません。こういった言葉を多用してしまうと、結局のところ話が通じにくくなりますし、悪くすると上から目線のイヤな感じを与えることになりかねません。
もうひとつ心がけたいのは、一方的に話をするのではなく、相手の話も聞く姿勢を持つことです。報告だけして終わりではなく、内容に関して不明なことや質問はないかは、必ず問いかけてください。その際、報告内容に関係のないことでも、困っていることや悩みごとがないか尋ねてみるといいでしょう。対応に時間がかかるようであれば、別の機会を設けます。こういったやり取りが、安心と信頼につながります。
言葉遣い
基本は、敬語です。とはいえ「敬語で話さなければ」と意識しすぎると、かえっておかしな言葉遣いになってしまうこともあるもの。形式的な敬語を使うというよりも、相手への思いやりや敬意を込めた言葉で話すことを心がけるようにしましょう。
なれなれしすぎる言葉、俗語や流行語は使うと失礼にあたるので、使わないことが基本です。
身だしなみ
身だしなみの一番のポイントは、清潔感です。口臭や体臭にも気を配り、相手に不快感を抱かせないように心がけましょう。
女性の場合はナチュラルメイクを心がけ、ロングヘアは束ねておきます。ネイルやアクセサリーなどの装飾品は、控えましょう。男性の場合は、髪の毛の寝ぐせ、無精ひげに気をつけてください。
利用者家族とコミュニケーションをとるときの注意点
こちらから何かを伝える場合、先方から話がある場合など、コミュニケーションにもさまざまなケースやパターンがありますが、どんなときにも気をつけたいのが、相手の話をきちんと聞いて受け止めることです。
それならできる……と思いがちですが、話をきちんと聞くというのは、意外と難しいもの。つい途中で話をさえぎりたくなること、こちらの話を聞いてもらいたくなることも多いのです。しかし、そこはぐっとガマン。まずは、相手の言うことに耳を傾けるようにしましょう。
時にはクレームを受けることもあるかもしれません。もしかしたら、先方が思い違いをしたり、一方的に思い込んだりということもあるでしょう。そのようなときも、いったんは「不快な思いをさせて申し訳ございませんでした」と、相手の言うことを受け止めるようにします。そうすると、聞く耳を持ってもらえるからです。
本当に施設側に不手際があったというのであれば、誠実に謝って対処することが第一であることは言うまでもありません。
介護施設では、利用者さんの家族に対応することも大事な仕事のひとつです。慣れないうちは緊張するかもしれませんが、ぜひこの記事で、自分なりの心がまえを持っておきましょう。ご家族ともいいコミュニケーションが取れるようになると、さらに仕事がおもしろくなりますし、いい仕事ができるはずです。介護技術はもちろん、コミュニケーション術も、どんどん磨いてくださいね。