独学でも大丈夫? 保育士試験の実技「造形」に合格するためのポイント
保育士になるためには、保育士養成の学校を卒業するルートと、保育士試験に合格して国家資格を取得するルートとがあります。保育士試験は、受験資格さえ満たせば独学でも受験できますが、筆記試験のほかに課せられる実技試験は、独学だと不安になるかもしれません。特に「造形」は、評価のポイントがつかみにくい科目です。
合格するためには、どのような対策を取ればいいのでしょうか。こちらの記事で説明します。
保育士試験とは?
保育士を目指す人のうち、保育士養成の学校を卒業していない人が、資格取得のために受けるのが保育士試験です。受験資格を満たせば誰でも受験でき、年齢制限もありません。独学で挑戦する人も多くいますし、子育てを終えて挑戦する人もいます。
試験は年に2回。内容は9科目の筆記試験と、3つの分野から2つの分野を選択する実技試験とがあります。ただし実技試験は、筆記試験に合格しないと受けることができません。
とはいえ、筆記試験9科目を1回の試験で合格するのは大変といえば大変。そこで、筆記試験の合格は3年間有効とされ、3年の間に9科目の筆記試験を突破すれば、実技試験に進むことができるようになっています。
筆記試験の内容は「保育の心理学」「保育原理」「児童家庭福祉」「社会福祉」「教育原理」「社会的養護」「子どもの保健」「子どもの食と栄養」「保育実習理論」の9科目。実技試験は「音楽表現に関する技術」「造形表現に関する技術」「言語表現に関する技術」の3分野から2分野を選んで受験します。
合格するためには6割以上の得点が必要で、合格率は20%程度。難易度は高めといえます。実技試験のうち「造形」は苦手とする人も多いので、出題傾向にそった対策を考えておきましょう。
「造形」に求められるスキルとは?
「造形」に求められるスキルは、情景や人物を、イメージ豊かに明るく楽しく表現できるかどうかです。保育士は子どもを相手にする仕事ですから、美術的に特に優れたセンスやテクニックが必要とされるわけではないので、その点はご安心ください。
とはいえ、落書きレベルで合格できるというほど甘くもありません。また、「音楽」と「言語」はあらかじめ課題が提示されますが、「造形」だけは試験当日に内容がわかります。つまり、その場で問題を把握し、的確に表現する力が必要ということ。人物の表情、遠近感、色使いなども評価の対象になるので、しっかりと対策をしておくことが大切です。
保育士試験の造形に合格するためのポイント
造形の試験をクリアするためには、どのように勉強を進めればいいのでしょうか。押さえておきたいのは、次の4つのポイントです。
造形の過去問を見て、たくさん練習をする
まずは過去にどのような問題が出たかを確認し、それに合わせて何度も練習を重ねることです。使う道具は試験と同じ「HB~2Bの鉛筆またはシャープペンシル」「12色か24色程度の色鉛筆」「消しゴム」を揃えましょう。絵を描くサイズはA4用紙の中に設定された19cm四方の枠の中です。
出題されるのは、例年、保育園での一場面となっています。過去問に取り組むかたわら、保育室内の様子、園庭の遊具や花、保育園の行事などを描く練習もしておくといいでしょう。
また、子ども数名と保育士を描くこと、色鉛筆で彩色するという条件は毎回同じですが、子どもについては年齢が指定されています。年齢による描き分けの練習もしておいてください。参考までに、過去の問題例を挙げてみましょう。
平成30年前期は「1歳児のお誕生会を5歳児がお祝いする」という課題で、背景は「きれいに飾りつけられた保育室内」、人物は「1歳児、5歳児、保育士が各1名以上」という指定でした。
令和元年前期は「4歳児が花や野菜に水やりや収穫の世話をしている」という課題で、背景は「夏の園庭」、人物は「4歳児3名以上、保育士1名以上」という指定です。
人物に表情をつけてかく
場面に登場する子どもたちと保育士のやり取りが伝わるように、表情豊かに描くこと心がけましょう。保育場面を思い浮かべればわかりますが、みんながみんな同じ表情をしているわけではありませんし、ひとりひとりの背格好も異なります。笑顔の子ども、得意げな顔の子どもなど、ポーズにも変化を持たせ、生き生きとした空気感を伝えるように描いてみましょう。
大人と子どもを描き分ける
大人と子どもでは体型が違いますし、服装も違います。その点もしっかり意識して描き分けるようにします。
また、先ほどもお伝えしましたが、子どもを年齢別に描き分けることもポイント。自分なりの描き分け方を身につけておくと、当日焦らずにすみます。
色塗りも丁寧に行う
練習だと下絵に力が入り、色塗りは面倒に感じるかもしれませんが、しっかりと色塗りの練習もしておきましょう。全体を明るい色調にし、楽しい雰囲気が感じられるように丁寧に塗ってください。自分自身が楽しい気持ちで取り組むと、その気持ちが色使いにも表れるはずです。
保育士試験の実技には「造形」があります。試験問題は当日にならないとわかりませんが、練習を積み重ねておけば心配は無用です。子どもと保育士が、保育園で活動するさまざまな場面を描いて練習を積んでおいてください。その際、表情や遠近感、人物の年齢、全体的な明るさも意識してみましょう。ぜひ、お伝えした内容を参考にして、実技試験の突破を目指してくださいね。