保育士の残業は多い? 少ない? 平均残業時間や残業の理由について説明
保育士の資格を持っている人は多いのに、人手不足といわれる保育業界。せっかく就職しても、残業の多さから退職してしまう人も少なくないようです。それは単なるうわさレベルの話なのか、それとも保育士の実情なのか、本当のところはどうなのでしょうか。
この記事では保育士の残業に、さまざまな角度からスポットを当てて見ていくことにします。
保育士の残業が多くなってしまう理由
まずはしっかりと現実を見ることにしましょう。
保育士の残業は、想像以上に多いといえます。その主な理由は次の通りです。
保育士のメインの仕事は、言うまでもなく子どもを預かって保育を行うこと。しかし、それだけですむというわけではありません。付随する業務がたくさんあるからです。
たとえば、毎日のように発生するのが、保護者とやり取りする連絡ノートの作成、保育日誌の記入です。連絡ノートはお迎えの時間までに書いておかなければなりませんから、お昼寝などで手の空いた時間に記載できるといえばできるのですが、決して余裕があるというわけではありません。だから、保育を優先にすると、つい後回しになりがちに……。
保育時間がすんだら、翌日の準備が待っています。そのほか園だよりを作ったり、保育計画を立てたりといった事務作業もこなさなければなりませんし、季節に合わせた室内装飾なども保育士の仕事です。イベントが近ければその準備に追われますし、職員会議や研修などに参加しなければならないことも、もちろんあります。
こうして見ると、子どもが園にいる時間帯には行えない仕事が意外と多いことに気づくのではないでしょうか。それらはほぼすべて、残業仕事になります。
人員が足りていれば「室内装飾担当」「イベント準備担当」というように役割分担ができるでしょう。そうすれば残業時間も減るわけですが、多くの保育園が慢性的な人手不足に陥っているというのが実情から考えると、現実的ではありません。
また、たとえ自分の仕事は終わっても、同僚や先輩が仕事をしていると帰りにくいという状況もあるようです。結局、お手伝いをして残業時間が増えるということになってしまいます。
まとめてみると、保育とは直接関係のない事務作業、定期的に実施されるイベントや行事の準備、人手不足が原因で残業を余儀なくされるといえそうです。
保育士の残業時間の目安
厚生労働省が2019年に実施した『賃金構造基本統計調査』によると、保育士の1か月の残業時間は4時間となっています。月に4時間というと、1日に換算して10数分程度。それだけの時間で、上記でお伝えしたような保育以外の業務を終えられるとは考えにくく、この数字は実態にそぐわないものだという見方が主流です。
ではなぜ、このような数字が出てしまうのか。それは、多くの保育士が、残業時間を正規の残業として申告するのではなく、家に持ち帰るなどのサービス残業としてこなしているからと考えられます。
残業代はいくらくらいもらえるの?
保育士の仕事で残業代がいくらくらいもらえるのかは、園の規定にもよるので一概には言えません。
どちらかというと残業時間に対して時給を払うというよりは、運動会などのイベントなどもひとまとめにして、「手当金」の名目で一律支給する園が多いようです。
では、その手当金で残業時間分の支払いがまかなえているかというと、そうとも言えません。
つまり、一定の手当ては出るものの、その金額で残業時間分すべてをカバーできるというわけではなく、どうしてもサービス残業になってしまう部分があると言って差し支えないでしょう。
できるだけ残業をしないですむ方法
では、どのようにすれば残業を減らすことができるのでしょうか。できるだけ残業をしないですむ方法を考えてみましょう。
休憩の確保や時間外労働の取り組みをしている園を探す
保育業界では近年、ICTシステムを導入するなどして、保育士の働き方を見直し、残業削減を目指す動きが出ています。ですから、そういった動きを積極的に展開している園、時間外労働も正当に評価する園を探して就職することは、残業対策のひとつといえるのではないでしょうか。
もちろん、こういった取り組みをしぶる園、古くからの慣習を打ち破れない園も、多くあります。ぜひ、経営方針や理念などを確認し、保育士の働き方改革を推進している園を見つけ出してください。
企業内保育所や院内保育所で働く
企業内保育所や院内保育所で働くことも、ひとつの方法です。どちらも、一般的な園に比べるとイベントや行事が少なく、持ち帰りなどのサービス残業も少ないといわれています。保護者がすぐ近くで働いていますから、いざというときにも安心です。
派遣として保育士になる
どうしても残業したくない場合は、派遣として保育士になるという道もあります。派遣なら、労働条件は派遣会社が交渉してくれますし、正規の職員でなければ持ち帰り仕事も基本的には発生しないはず。サービス残業を押しつけられそうになったら、派遣会社に相談して対処してもらうこともできます。
保育士の残業の実情は、なかなか厳しいものがあるかもしれません。保育サービスは向上しているものの、そのしわ寄せが保育士にきているからです。常に人手不足の状況にあるため、さらなるしわ寄せが保育士にきて、サービス残業が当たり前という園も多くなっています。どのように働くかを決めるのは自分自身。できるだけ残業しないで働く方法を見つけ、ぜひプライベートも充実させていきましょう。