比較的新しい資格! 認知症ケア専門士とは?
介護業界には、介護福祉士や社会福祉士といった国家資格のほか、任意の団体が認定する民間資格があります。そのひとつとして最近、注目されているのが認知症ケア専門士です。どちらかというと新しい資格なので、もしかしたら「知らない」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、介護の世界で仕事をするのなら、持っていて損はない資格です。この記事で説明しますので、ぜひ参考にしてください。
認知症ケア専門士の資格とは?
認知症ケア専門士とはどのような資格なのか、まず概要を押さえておきましょう。
認知症ケア専門士は「一般社団法人日本認知症ケア学会」が試験を実施し、認定している資格です。第1回目の試験が実施されたのが2005年なので、介護資格の中では比較的新しい部類に入るといってよいでしょう。
この認定資格が目指すのは、認知症のケアに関して卓越した知識と技能を身につけ、しっかりとした倫理観を備えた認知症のスペシャリストを養成することです。もちろん、認知症ケアのスキルアップ、福祉・保健分野での活躍も見据えた資格となっています。
この資格があれば、認知症のご本人や家族に対して必要とされるケアやアドバイスを提供できるように。それだけでなく、認知症ケアの現場をリードし、統括する立場になることもあるはずです。
平均寿命が上がり、高齢化社会に突入している日本において、認知症と診断される人が増加しているのは、揺るぎのない事実です。認知症ケア専門士は、そういった社会で活躍する人材として期待されているといっても過言ではありません。
なお、資格は5年ごとの更新制となっています。更新の要件は、学会や講演会・研修会への参加、論文の執筆や発表などで30単位以上を取得していること。つまり、単に更新手続きをすればすむというわけではなく、常に最新の技術や知識を身につけること、スキルアップの姿勢が求められているということです。その点は、ぜひ念頭に置いておきましょう。
認知症ケア専門士の資格を取得するメリット
高齢化社会、さらには認知症診断を受ける人が増加しているという現実に、日本社会はなかなか対応が追いついていません。そんな中、認知症ケア専門士は、認知症についての知識やケアに関する幅広い技術を身につけている――そのように認められているわけですから、介護施設や福祉施設、医療機関など、さまざまな現場で求められています。言い換えれば、幅広い仕事に携われるということであり、それは就職や転職の際にも有利になるということでもあるのです。
近年は、介護と医療が提携してサービスを提供することも増えてきました。居宅介護支援事業というスタイルもあります。そういった背景から、看護師や作業療法士など医療に携わる人が認知症ケア専門士の資格を取得するケースも少なくありません。それだけ、職場を選択する幅が広がるということでもあります。
なお、認知症ケア専門士が在籍し、さらに一定の条件を満たしている福祉・医療施設に対して認知症ケア学会は「認定機関」というお墨付きを授与しています。このお墨付きは、施設側としては、利用者の信頼獲得につなげられるもの。そういった意味でも、認知症ケア専門士の資格を持つ人は、広く求められているといって差し支えないでしょう。これは、より自分にとって条件が合う職場が探しやすくなるということ。就職や転職で資格がアピールできるのは、大きなメリットといえます。
認知症ケア専門士の資格を取得するには
最後に、認知症ケア専門士の資格試験について、受験資格および、合格発表までの流れをご紹介します。
まず受験資格ですが、過去10年において「3年以上、認知症ケアの実務経験がある人」と規定されています。ただし、実務経験の場が、認知症専門の施設や医療機関である必要はありません。また、介護福祉士等の資格を有しているか否かといったことも不問です。問われるのは、3年以上、認知症のケアに携わっていたという事実のみ。これが満たされれば、受験することができます。
ただし、ボランティアや実習レベルの活動は対象とはなりませんので、ご注意ください。
試験は、7月ごろに実施される第1次試験と、11月~12月ごろに実施される第2次試験とがあります。第2次試験を受けられるのは第1次試験を通過した人だけです。
第1次試験の内容は「認知症ケアの基礎」「 認知症ケアの実際Ⅰ:総論」「認知症ケアの実際Ⅱ」「認知症ケアにおける社会資源」の4分野で、『認知症ケア標準テキスト』から出題されます。各分野50問のWEB・五者択一形式で、それぞれ70%以上を正答すれば、その分野は合格。4分野すべてで合格点を獲得すると、第1次試験の通過となります。
第2次試験は、認知症ケアの事例(3題)に対する論述です。認知症をきちんと理解しているか、適切な介護計画を立てられるかなど、5つの要件に合致した内容であるかにより、合否が判定されます。
試験はここまでですが、資格認定を受けるためには、第2次試験に合格した後、倫理研修において動画を視聴することが必須です。動画視聴を終え、所定の手続きをすれば、晴れて資格認定となります。
認知症ケアに携わって3年以上の実績があれば、認知症ケア専門士の資格試験を受けることができます。資格を取得すれば、専門家として認められるだけでなく、就職や転職の際も有利です。なお、1次試験は4分野すべてで合格しなければなりませんが、合格の有効期間は5年なので、5年のうちにほかの分野の合格を目指すという道もあります。スキルアップのため、仕事の幅を広げるためにも、ぜひ資格取得を目指してみませんか?