介護福祉士は保育士の資格が取りやすい? 資格の共通点と違い
介護福祉士と保育士は、どちらも福祉分野の仕事という点では共通していますが、それ以外はさまざまな部分で大きな違いがあります。ところが、介護福祉士の資格を持っている人が保育士の資格取得を目指す場合、保育士試験の一部科目が免除になるのです。なぜ、このような制度があるのでしょうか。介護福祉士と保育士の資格の違いに触れながら、その理由を詳しく見ていきましょう。
- 介護福祉士と保育士の違い:必要な資格
- 介護福祉士と保育士の違い:仕事内容
- 介護福祉士と保育士の違い:働く場所
- 介護福祉士と保育士の違い:待遇の違い
- 介護福祉士は保育士の資格が取りやすいのは本当?
- 介護福祉士と保育士の資格、両方を取得するメリット
介護福祉士と保育士の違い:必要な資格
まずは介護福祉士と保育士の資格の違いについて詳しくみていきましょう。介護福祉士の資格を取得するためには、介護福祉士国家試験に合格する必要があります。この試験を受験するためには、介護職として3年以上の実務経験を積んだ上で、実務者研修を修了することで受験資格を獲得することができます。尚、受験資格は介護福祉士の養成施設、福祉科や介護福祉科のある高校を卒業することで得ることも可能です。
一方、保育士の資格を取得するためには、厚生労働大臣が指定する「保育士を養成する学校その他の施設」で必要な科目を履修して卒業する方法と、保育士国家試験を受験して合格するという方法で取得することができます。尚、保育士の国家試験は基本的に大学や短大、専門学校を卒業していれば受験でき、中学卒業、高校卒業の場合には児童福祉施設で定められた時間の実務経験を取得することで受験することが可能です。
介護福祉士と保育士の違い:仕事内容
介護福祉士と保育士はどちらも福祉分野の仕事という点では共通していますが、その仕事内容には大きな違いがあります。ここでは、介護福祉士と保育士それぞれの仕事内容について詳しく見ていきましょう。
介護福祉士の仕事内容
介護福祉士の仕事内容は主に、着替えや食事、入浴、排泄の補助といった身体介護、掃除や洗濯といった生活援助、利用者のメンタルケアなどを通し、高齢者一人ひとりが生き生きと暮らすことができるように導くことです。
また、要介護者本人はもちろんそのご家族の悩みに寄り添い、適切な指導やアドバイスをすることも求められます。介護福祉士は介護の現場におけるリーダー的存在でもあるため、要介護者とそのご家族だけでなく、同じ職場で働く介護スタッフへの指導、タスク管理などチームマネジメントを行うことも大切な仕事のひとつです。
保育士の仕事内容
保育士の仕事は、ひと言で表すと「0歳〜6歳までの乳幼児に対する保育」です。その内容は、単純に子どもを預かって身の回りの世話をするというだけでなく、食事、睡眠、排泄、着替えといった基本的な生活習慣を身に付けさせること、集団生活を通して社会性を養うこと、遊びを通して心身の健やかな発達を促すことなど、大切な役割を担っています。
また、保護者に対する子育て支援、教育などの手助けやアドバイス、保育日誌の作成なども保育士の大切な仕事です。
介護福祉士と保育士の違い:働く場所
次に、介護福祉士と保育士の働くフィールドの違いについて詳しく見ていきましょう。介護福祉士の働く場所は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービスセンターなど、主に高齢者のための介護施設が一般的です。
それ以外にも、身体障害者の療養施設や療養病棟のある病院でも介護士の需要は増しています。また、介護福祉士の高度な専門知識を生かし、役所などの介護福祉の相談窓口などで、介護サービスを希望する方のサポートをしている介護福祉士もいるようです。
一方、保育士の働く場所は、主に保育園をはじめ、児童養護施設、児童発達支援センターなどの児童福祉施設がメインとなっています。また、保育士の資格を取得していることによって、学童保育や認定こども園などでも就業することが可能です。
介護福祉士と保育士の違い:待遇の違い
では、介護福祉士と保育士に待遇の違いはあるのでしょうか。あるとしたら、どのくらいの違いがあるのでしょうか。厚生労働省が2021年に実施、2022年に公表した『賃金構造基本統計調査』の結果をもとに見てみることにしましょう。
この調査によると、保育士の平均月給は約25万円、年間賞与等は事業規模にもよりますが、約60万~70万円程度となっています。一方の介護福祉士は、職種によって多少の差があるものの、月給は約26万円前後、年間賞与等は保育士と同じように事業規模にもよりますが、だいたい50万~60万円程度です。
金銭的な待遇は、勤務先で変わるため一概に結論づけることはできませんが、この調査を見る限り、資格による大きな待遇差はないと言って差し支えないのではないでしょうか。
介護福祉士は保育士の資格が取りやすいのは本当?
介護福祉士が保育士の国家資格取得を目指す場合、試験科目のうち「社会的養護」、「児童家庭福祉」、「社会福祉」の3科目の受験が免除になるのをご存知でしょうか。
これまで、保育士養成課程というのは「教養科目」、「必修科目」、「選択必修科目」の3つから構成されていましたが、平成29年5月に行われた「保育士養成課程等検討会ワーキンググループ」主催の検討会で、この3つのうちの「必修科目」を「保育に関する科目」と「福祉職の基盤に関する科目」の2つに分けられることが決まりました。
このうち「福祉職の基盤に関する科目」は、福祉制度の基礎的知識や大人援助、生活援助の基礎といった福祉職の基盤となる内容が中心の科目で、介護福祉士になるために必要な履修内容と、共通する点が多いため免除となったのです。
つまり、保育士試験の一部科目が免除になることで、介護福祉士の資格を持っている人は、それ以外の人と比べて保育士の資格が取りやすいというわけです。尚、介護福祉士以外にも、社会福祉士、精神保健福祉士などの資格を持っている場合も、一部科目が免除となります。
介護福祉士と保育士の資格、両方を取得するメリット
最後に、介護福祉士と保育士の資格を取得するメリットについて考えてみましょう。
まず、働き方の選択肢が大きく広がることが挙げられます。保育士のおもな仕事場は保育園をはじめとした子どものための施設、介護福祉士が働くのは、介護に関するさまざまな施設です。
どちらも人手不足が叫ばれている業界ということもあり、多くの求人が出ています。最近は、子どもの施設と高齢者施設を合体させる試みも増えてきました。両方の資格を取得していれば、自分の条件に合った職場を見つけられる確率がぐんと上がります。
また、例えば保育士として働いてみて「子どもは好きだけど、仕事にするなら高齢者のお世話のほうが向いている」など、いろいろな気づきもあるはず。こういった場合、ふたつの資格があれば転職にも有利ではないでしょうか。
もうひとつ、福祉に関して総合的な視野を持って仕事ができることもメリットと言えるのではないでしょうか。子どものこともわかるし高齢者のこともわかる、社会全体を見通して仕事ができるというのは、大きな強みともいえます。
介護福祉士と保育士の両方の資格を取得しておくことで、働き方や働く場所の選択肢が大きく広がります。どちらもニーズの高い仕事ですので、介護福祉士か保育士どちらかひとつの資格しか取得していない場合には、もう一方の資格取得も目指してみてはいかがでしょうか。